乙女は白馬に乗った王子を待っている
ゆり子はさらっとスルーして、さっき作ったチャーハンの残りと、適当にソーセージやポテトなどのつまみを作ってコタツに出す。

翔太はコップやお皿を用意していた。

コップを用意したのは、ゆり子がビールをコップから飲むのを好むのを心得ているからだ。

ゆり子は翔太のこういう気遣いを好ましく思っている。

「来週の金曜日にさー、ウチの社長と合コンすることになったんだー。」

「ふーん……」

ぬるい相づちだった。

「さやかが、どうしても社長とか専務と付き合いたいらしくて、頼まれちゃってて。
 ウチの会社なんて、いつ倒産するか分からないし、
 アタシの給料だってちゃんと出るかわからないのに、社長ならそれでもいいんだって。」

ゆり子は、話しながらさやかへの非難になってないだろうかと、ヒヤリとする。

どんな顔で話してるか、鏡でチェックしたい。
仏頂面ならまだしも、ドヤ顔だったら最悪だ。

「さやかちゃんは、やっぱりそういうのに憧れてるんだ……。」

翔太は落胆を隠そうともしなかった。





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