乙女は白馬に乗った王子を待っている
さやかは白馬に乗った王子様を捕まえたらしい
次の日の朝、ゆり子が起きた時、まださやかは帰ってきてなかった。
本当にお持ち帰りしちゃったんだ……、ふん、やっぱりいい加減なオトコだったんだな……。
ゆり子が昨晩からのことを思い出しながら、ふとんの中でウダウダしていると、玄関で鍵をかちゃかちゃ言わせる音が聞こえてきた。
さやかに違いない。
さやかと顔を合わせるのがひどく億劫に感じられて、ふとんの外に出られなかった。
「ゆりちゃん〜」
機嫌の良さそうな鼻歌まじりの声が聞こえてくる。昨晩の首尾は上々だったのだろうか。そのうちに、ゆり子の部屋までコーヒーの芳ばしい香りが漂って来た。さやかの歌うような軽やかな声が再びゆり子の耳に届く。
「ゆりちゃーん、コーヒー入れたよ。飲むでしょ?」
ゆり子はのろのろと立ち上がった。
リビングに行ってみると、少し頬を上気させたさやかがコーヒーを注いでくれた。
昨晩の話をしたくてうずうずしている顔だ。ゆり子はしかたなくさやかに話しかけた。
「で、昨日はどうだったの、高橋社長とは。」
「サイコウだった。」
うっとりするさやかにゆり子はそれ以上かける言葉もなかった。