乙女は白馬に乗った王子を待っている
週末のブランチは、グラスをカチンとならして、乾杯するところから始まった。
店の外にずらっと並んだ長い行列を尻目に、東城はすたすたと店内に入っていくと二人はすぐに席に通された。
席について、シャンパンが注がれるのを見ながら、ゆり子は東城に訊いた。
「予約して下さってたんですか?」
「当たり前じゃない。ゆりちゃんを待たせるわけにはいかないでしょ。」
やっぱり……、意外だ。
「もし、私が断ってたらどうしてたんですか?」
「一人で来るんじゃない?失恋を癒しに。」
生ガキと海老のカクテルソース添えが運ばれて来た。ずいぶん贅沢なブランチだ。
「美味しそう。頂いてもいいですか。」
「もちろん。」
ゆり子は、レモンをかけて頂く。つるんと喉越しもよく、濃厚な味のカキだった。
美味しそうに手を付けるゆり子を、東城はにこにこしながら見ていた。
その後も、三種類のペイストリーにフルーツサラダ、キーシュ、と次々に出てくる料理を見事にぺろりとたいらげる。
最後にカシスのムースとコーヒーが出て来た時には、さすがのゆり子もお腹がはちきれんばかりだった。