雨音の周波数
 私はイスから立ち上がる。おはようございます、と挨拶を交わしながら皆が席に着く。全員が揃ったところで会議が始まった。

 現在、お昼の二時から四時にかけて放送している『to time』がリニューアルすることになった。月曜日から水曜日の放送だったものが、一日増えて月曜日から木曜日までの四日間になる。番組名も変更し『to place』になる。

 今日は『to place』の番組内容などの企画について話し合う。リニューアルと言っても大幅に変更するのではなく、今までの『to time』をベースにしていくため、一から立ち上げる番組よりは楽だ。

 そして私は放送作家として水曜日と木曜日を担当する。単発の番組をずっと担当していたため、帯番組を持つというのはプレッシャーも感じるが楽しみだと思うほうが勝っていた。

 会議も順調に進み、最後の山場を迎えている。

「四月のレーティングはどうしましょうか?」と、番組プロデューサーの山岸さんが言った。

 全員がどうしましょうという顔でホワイトボードを見つめた。

 レーティングとは聴取率のことで、年に数回その調査をする。期間は一週間。レーティング期間中はどのラジオ局も、スペシャルウィーク、プレゼントウィーク、リスナーズウィークなどと銘打って、アーティスト、タレント、専門家などを呼んだり、抽選によるリスナープレゼントをしたりする。

 ラジオ番組を制作するにも予算はいる。でもその予算もカツカツの状態だ。それでもうちの番組はスポンサーがついている分、少しはマシだ。これはラジオ業界に限ったことではないだろう。テレビ、映画、音楽、書籍、この手の話はどこにでもある。一般の企業だって同じだろう。

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