雨音の周波数
〈今日も楽しく拝聴しました。僕はいつも車の中でこの番組を聴いてます。仕事柄、車での移動が多く、午後の仕事も頑張ろうという気持ちになります。

 ラジオドラマが聴きたいです。僕もクリスマス特番のラジオドラマを聴き、あまりに面白かったので感想メールまで送ってしまいました。ラジオって、こんなにいろいろなことができるメディアなんだと感じました。

 また聴きます。今日も一日お疲れ様でした。

 匿名希望 東京都 石井 圭吾〉


 どうしてだろう。このメールは私の知っている圭吾だと思ってしまう。"石井 圭吾"という名前なら同姓同名の人がいてもおかしくないのに。

 手に持っていた圭吾のメールを読み終えた方に置き、別の感想メールを読む。

 頭の中には高校生の姿で止まっている圭吾が浮かんでいた。


 圭吾のメールは水曜日と木曜日は必ず来るようになった。月曜日と火曜日には来ていないらしい。夏川さんや中島さんにそれとなく確認をした。

 メールの内容は番組が面白かったという感想、仕事であったちょっとした話。そして最後には決まった文章が来る。


〈また聴きます。今日も一日お疲れ様でした。

 匿名希望 東京都 石井 圭吾〉


 この部分を読むたび、心がざわざわする。あの圭吾なのだろうか、また明日もメールが来るのだろうか。もし本当に圭吾であれば、私と圭吾が唯一つながることのできる場所。それが『to place』だ。

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