雨音の周波数
頭を撫でたり、指を絡めてきたり、キスしてきたりする。その合間に「春香」と言ったり「好き」と言ったりもしてくる。
知らない間に随分と激甘な男になったもんだ。それを圭吾に言ったら「春香は随分と男前になったよね。そういうところも好き」と言われた。お互いさまのようだ。
「ねえ、前から聞きたかったんだけど、私が放送作家をやってるかもって思ったのは、クリスマス特番のラジオドラマから?」
「うん。車で聴いてたらスタッフロールに春香の名前があって。同姓同名かもしれないけど、なんとなく春香な気がして。うちの会社がスポンサーになってるラジオ番組の資料に、放送作家(新)小野春香って名前を見つけたときは運命を感じたよ」
背後から聞こえてくる声に「へえ」と相槌を打つ。そして何通も届いた圭吾のメールを思い出していた。
「でも、顔がわからないから春香だって確信は持てなくて。それからラジオは毎回聴いてメールを送ったんだ。ラジオから春香の声が聴こえてきたときは本当に嬉しかった。見つけた! って思ったから」
「そっか。逃げちゃってごめんね。見つけてくれてありがとう」
後ろを振り向くと、少し照れたように笑う圭吾がいる。首に腕を回すと顔が近づき、必然と目を閉じる。唇を合わせると少しずつ深くなっていく。小さな音を立てながら唇を離し、額を合わせる。お互い視線を絡め、口元を緩めた。
結婚しても私たちは今と変わらない気がする。こんな日常が幸せと思えるなら、きっとこれが愛じゃないかなと思う。
今、思っていることを言ったら、明日にでも婚姻届を取ってきそうな気がするから、これを伝えるのはもう少し先にしよう。
さっきパソコンでテキストエディタを開いたとき、メモの中に"恋とは幻想。愛は現実にある"というのを見つけた。いつか見た新刊のキャッチコピーに、私が勝手にアレンジを加えたものだ。
これは少し違うかもしれない。恋も現実。愛も現実。ただし恋は愛の先にある。しかも恋を見つけなければ愛は見つからない。それを確かめたい、圭吾と一緒に。
~End~
知らない間に随分と激甘な男になったもんだ。それを圭吾に言ったら「春香は随分と男前になったよね。そういうところも好き」と言われた。お互いさまのようだ。
「ねえ、前から聞きたかったんだけど、私が放送作家をやってるかもって思ったのは、クリスマス特番のラジオドラマから?」
「うん。車で聴いてたらスタッフロールに春香の名前があって。同姓同名かもしれないけど、なんとなく春香な気がして。うちの会社がスポンサーになってるラジオ番組の資料に、放送作家(新)小野春香って名前を見つけたときは運命を感じたよ」
背後から聞こえてくる声に「へえ」と相槌を打つ。そして何通も届いた圭吾のメールを思い出していた。
「でも、顔がわからないから春香だって確信は持てなくて。それからラジオは毎回聴いてメールを送ったんだ。ラジオから春香の声が聴こえてきたときは本当に嬉しかった。見つけた! って思ったから」
「そっか。逃げちゃってごめんね。見つけてくれてありがとう」
後ろを振り向くと、少し照れたように笑う圭吾がいる。首に腕を回すと顔が近づき、必然と目を閉じる。唇を合わせると少しずつ深くなっていく。小さな音を立てながら唇を離し、額を合わせる。お互い視線を絡め、口元を緩めた。
結婚しても私たちは今と変わらない気がする。こんな日常が幸せと思えるなら、きっとこれが愛じゃないかなと思う。
今、思っていることを言ったら、明日にでも婚姻届を取ってきそうな気がするから、これを伝えるのはもう少し先にしよう。
さっきパソコンでテキストエディタを開いたとき、メモの中に"恋とは幻想。愛は現実にある"というのを見つけた。いつか見た新刊のキャッチコピーに、私が勝手にアレンジを加えたものだ。
これは少し違うかもしれない。恋も現実。愛も現実。ただし恋は愛の先にある。しかも恋を見つけなければ愛は見つからない。それを確かめたい、圭吾と一緒に。
~End~
