雨音の周波数
 頭を撫でたり、指を絡めてきたり、キスしてきたりする。その合間に「春香」と言ったり「好き」と言ったりもしてくる。

 知らない間に随分と激甘な男になったもんだ。それを圭吾に言ったら「春香は随分と男前になったよね。そういうところも好き」と言われた。お互いさまのようだ。

「ねえ、前から聞きたかったんだけど、私が放送作家をやってるかもって思ったのは、クリスマス特番のラジオドラマから?」
「うん。車で聴いてたらスタッフロールに春香の名前があって。同姓同名かもしれないけど、なんとなく春香な気がして。うちの会社がスポンサーになってるラジオ番組の資料に、放送作家(新)小野春香って名前を見つけたときは運命を感じたよ」

 背後から聞こえてくる声に「へえ」と相槌を打つ。そして何通も届いた圭吾のメールを思い出していた。

「でも、顔がわからないから春香だって確信は持てなくて。それからラジオは毎回聴いてメールを送ったんだ。ラジオから春香の声が聴こえてきたときは本当に嬉しかった。見つけた! って思ったから」
「そっか。逃げちゃってごめんね。見つけてくれてありがとう」

 後ろを振り向くと、少し照れたように笑う圭吾がいる。首に腕を回すと顔が近づき、必然と目を閉じる。唇を合わせると少しずつ深くなっていく。小さな音を立てながら唇を離し、額を合わせる。お互い視線を絡め、口元を緩めた。

 結婚しても私たちは今と変わらない気がする。こんな日常が幸せと思えるなら、きっとこれが愛じゃないかなと思う。

 今、思っていることを言ったら、明日にでも婚姻届を取ってきそうな気がするから、これを伝えるのはもう少し先にしよう。

 さっきパソコンでテキストエディタを開いたとき、メモの中に"恋とは幻想。愛は現実にある"というのを見つけた。いつか見た新刊のキャッチコピーに、私が勝手にアレンジを加えたものだ。

 これは少し違うかもしれない。恋も現実。愛も現実。ただし恋は愛の先にある。しかも恋を見つけなければ愛は見つからない。それを確かめたい、圭吾と一緒に。


~End~

< 79 / 79 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:101

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ブーケ・リハーサル

総文字数/30,050

恋愛(オフィスラブ)58ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ブーケが一番取りやすい場所は一番前。 だから、ブーケを取りたいなら一番前に行かなくちゃいけない。 それは恋と一緒。欲しければ誰よりも前へ行け。 不誠実な男と別れた。 そのせいで眠るのが下手になり、恋が面倒になった。 転職した先で出会ったのは 誠実な副社長だった。 『選ばれしハイグレードな極上男子から愛されまくりの オフィスラブ中・短編コンテスト』入選 エントリー:2017/8/31 公開:2017/9/14
メシトモ!

総文字数/105,955

恋愛(オフィスラブ)235ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
━━・‥…━━・‥…━━・‥…━━ 寒い雪の日。空からヴェールが降ってきた。 その持ち主は極上のイケメンだった。 ━━・‥…━━・‥…━━・‥…━━ 恋愛は面倒だ。 気楽な友達で充分。 そんな私が恋したのは 優しくて、真面目で、大事なものを失った 『メシトモ』でした。 ━━・‥…━━・‥…━━・‥…━━ 美味しいご飯と恋は比例する!? ━━・‥…━━・‥…━━・‥…━━ Start*2015/7/9 End*2016/11/9
恋のキッカケ

総文字数/4,443

恋愛(オフィスラブ)7ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
グラフィックデザイナー、同期の二人 予想外なことから二人は動き出す *:;;;:*:;;;:*゚。+☆+。゚+*:;;;:*:;;;:* 恋のキッカケは いつだって予想外 *:;;;:*:;;;:*゚。+☆+。゚+*:;;;:*:;;;:* 公開:20141127 *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~* 壁ドン短編小説コンテスト 参加作品 *~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop