婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「勇斗、昼間なんかあった?」
会社から帰ってきた圭司が、心配そうに勇斗の顔を覗き込んだ。
ベッドで眠る勇斗の顔には、うっすらと涙の跡が残っている。
あの後、勇斗は帰ってきてから、ベッドの中でずっと泣いていたのだ。
そして、夕ご飯を食べる前に泣き疲れて眠ってしまった。
「実は、今日ね…」
私は圭司に、公園であった出来事を全て打ち明けた。
「なるほどな それで、泣いてたのか…」
「そうなの 大事にしてたサクレンジャーを壊された挙げ句、勇斗のせいにされちゃってね ホント嫌な親子だったんだよ! まあ、私も最初から見てた訳じゃなかったし、公園にそんなオモチャを持たせちゃったから、あんまり強くは言えなかったんだけどね… それにしても、酷いでしょ! も~ これで、勇斗の男の子嫌いが益々エスカレートしちゃたよ」
「あー 確かにな…」
そう、勇斗は、美咲ちゃんや美咲ちゃんのお友達とは遊べるけれど、男の子には近寄ろうともしない。
男の子は嘘つきで乱暴だから怖いのだそうだ。
これは私と圭司の最大の悩みでもある。
「やっぱり、私がいけなかったんだよね 小さい頃から美咲ちゃんママくらいしかママ友いなくて、男の子のお友達とあんまり遊ばせてあげられなかったから…」
ジョボンと肩を落とすと、圭司が私の肩を抱き寄せた。
「大丈夫だよ。だから、勇斗を年少から幼稚園に行かせるんだろ? そのうち勇斗だって」
「だけど、考えてみて… 勇斗は3月生まれでしょ? 4月生まれの子とは1年も違っちゃうじゃない… 色々出来なすぎてイジメられちゃうかもしれないよね やっぱり美咲ちゃんちみたいに、年中からにした方がいいんじゃ」
不安でどんどん答えが分からなくなっていく…
「うーん そりゃ、最初は多少差もあるとは思うけど、逆に勇斗みたいなのは、早く送りこんで慣れさせた方が俺はいいと思うけどな… このままじゃ、また1年何も変わらないままだろ? まあ、とりあえず今度の運動会での、勇斗の反応を見てみようよ… ほら、未就園児が参加できる種目とかもあるんだろ?」
「うん… そうだね」
入園の願書を出すまでには、まだ少し猶予がある…
圭司の言うとおり、今度の運動会で勇斗の反応を見てみよう…。
勇斗の為にベストな選択をしてあげなければ…
私は勇斗の頭を撫でながら、そう決意した。
……………
土曜日になって、修理に出したサクレンジャーが返ってきた。
「へ~んちん!」
勇斗はすっかり元気になって、朝からサクレンジャーを抱えてバタバタと駆け回っている。
「こら勇斗~ あんまり、走っちゃダメだよ~ 下の人に迷惑だからね~」
洗い物をしながら、そう声をかけた途端、インターホンのチャイムが鳴り出した。
この音は、直接玄関からのチャイムだから、きっとマンションの住人だ。
やっぱりうるさかったのかな…
急いで濡れた手を拭いていると、圭司が先にインターホンを取ってくれた。
『あっ はい あー そうですか ちょっとお待ち下さい…』
「誰?」
「引っ越しの挨拶らしい」
ふーん こんな時期に珍しい…
とりあえずクレームでは無さそうでホッとした。
圭司と並んで、玄関のドアをガチャリと開けた。
「初めまして 先日、下の階に越してきました永岡と言います~ どうぞ、宜しくお願いします」
そう言って頭を下げたのは、勇斗くらいの男の子を連れた若いママさんだった。
「あっ どうも初めまして… 瀬崎です」
なんて言いながら私達も挨拶したのだけれど…
えっ ハル!?
顔を上げた彼女の顔を見て、私は思わず目を丸くした。
そう この目鼻立ちの整ったスタイル抜群の美人は、まさにモデルのハルと瓜二つだったのだ。