love square~四角関係なオトナ達~
そうだったんだ…。


あたしはいく兄ちゃんが大好きで、お嫁さん、ってしつこくせがんで。


幼い涙にくれた白いお花の指輪。


「枯れて捨てちまうようなちっぽけな指輪だった。だけど気持ちはそんなハンパなモンじゃなかったんだ。
“きっと迎えに来る”
ガキだったけどオレはその場しのぎなんかじゃねぇ約束をお前と結んだんだよ」


「…ごめんなさい」


「それって約束破棄のゴメン?」


「じゃなんて…!あたし、忘れてて…の、ごめんなさい…」


「だよな。でもさ、オレ、あの頃のまんまのヒマリで驚いたよ。ちっちゃくて何もできなくて、ワガママで。全然成長してねーの」


「うん…」


「ヒマリの親父は忘れてなかったよ。3年前のある日、フツーのサラリーマンやってたオレの元に、受けてもないのに河野ファームの採用合格通知書が届いて、さ。忘れられてない、オレは全てから拒絶されてたんじゃなかったんだ、って、気づかされた。ひょっとしてヒマリも忘れてなんていなくて、オレを待ってんのかも、なんて、バカな期待もしたりして」


「そう…だったんだ…」


「の、末の毎日のケンカ。なんで覚えてねぇんだよ、なんでオレしか見てくれねぇんだよ、って、もどかしさと苛立ちしかぶつけらんなかった。そんな遠い昔の記憶、オレは中学だったけど、物心つくかつかないかのヒマリが覚えてるワケ、ねぇのにな」


いく兄ちゃんは苦く笑って、ビールをあおった。


「オレの19年分の想い、間に合わないか?」


いつもとは違う眼差しのいく兄ちゃんが近づく。


少し重なるけど、あの頃のいく兄ちゃんとも違うような射貫くような瞳であたしを見る。
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