love square~四角関係なオトナ達~
「琉偉じゃない」


「…え?」


「琉偉にとって、ヒマリは身代わりでしかない」


身代わり…?


誰の?


「オレだけ見ろよ」


「いく…兄ちゃん…」


なぁに?


工藤にとって誰かの身代わりのあたしって…。


あたしは、誰…?


「ヒマリ…」


いく兄ちゃんはあたしの背中に手を回し、ワンピースのファスナーを下ろして。


全てを剥ぎ取っていく。


拭えないのは工藤への気持ち、それだけを残して脱がしていく。


「愛してた。愛してる…」


逞しい上半身に触れるあたしの肌に熱はなくて。


それでもいく兄ちゃんの指に、唇に体がピクンと反応する。


愛してるを繰り返されて。


でも、あたしは涙しか返せない。


「ア…ッ!いく、兄ちゃ…!」


「ヒマリ…!」


その夜、いく兄ちゃんは。


19年分の“愛してる”をあたしに注いだ───………。
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