溺れる恋は藁をも掴む

決意

 イタリアンのお店を後にした。


 店を出た時に、「いくらだった?」とアキに聞いた。

 「いい。
 今日は三浦の卒業式だし、お祝いだから」

 笑顔でアキは言った。

 「有難う、アキ」

 「誘ったのは俺なんだし、飯くらい奢るさ。
 それがスマートに出来ない男はダサいだろ?」

 「だね。
でも、有難う、本当に嬉しい!」

 ちゃんとお礼が言えない人やご馳走して貰って当然と思う人もダサいと思うから、素直な気持ちで有難うを言った。



 アキと並んで歩いた。
私はこれからを考えるとドキドキしていた。

 『最高の理解者』

 アキの言葉が頭に木霊する‥‥


 言葉は言い様だ。
セフレを最高の理解者と呼べば、やましい気持ちも失せていく。

 理解したいから抱かれるのだ。
理解されたいから決意したのだ。


 アキは私に恋愛感情はない。
それもハッキリ言われてる。

 好きになってはいけない。
好きになったら、また苦しくなる。

 そんなの予想がつく。

 セフレはセフレ。


 それでも‥‥‥


 ーー私の自信を取り戻そうとしてくれている、アキは最高の理解者でもあったーー
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