溺れる恋は藁をも掴む
 通りにあった、普通のラブホテルにアキと入った。

 部屋のパネルを押し、顔の見えないフロントさんから、鍵を受け取り、3Fまでエレベーターで上がる。

 これから私はアキに抱かれる。

 そんな現実を考えたら、心臓が口から飛び出してしまうんではないか………?

 それくらいの緊張してドキドキした。

 無口になれたし、はしゃげない。
 当たり前だよね?
 わたしって軽い?

 ーー軽いよねーー


 それでも理性を吹き飛ばして、セックスしたい日もある。

 そんなセックスを求めた時に、抱かれたいと思う人が目の前に居たら…………


 ーー私なら、抱かれたい気持ちに素直になるよーー



 アキはそんな私を言葉少なげで見守っていた。

 手はギュッと繋いだまま。

 エレベーターを降りて、選んだ部屋に入る。


 パネルで一緒に部屋を選んだ時……

 「どこにする?」
アキが囁くように言った。

 イタリアンをご馳走になってるから、高い部屋なんて滅相も無いと、現実的になったりもした。


 「三浦、この部屋はどう?
雰囲気良さそうじゃない?」


 「うん…」



 二人で選んだ部屋は落ち着きのある、海の底をイメージしたような部屋だった。

 暗いわけではなく、神秘の世界が待ち受けているような?

 そんな未知への予感を思わせた。
< 116 / 241 >

この作品をシェア

pagetop