溺れる恋は藁をも掴む
 早く、泣き喚く柊を抱きしめて、ミルクをあげて落ち着かせたい母さんは、悲しい目をして、俺たちに危害を加えられないように、なすがままになっていた。



 真っ赤になって、罵倒し、興奮して鬼の形相の親父が落ち着くのをじっと待っていた。

 何も言い返さない母さんを、挑発するかのように更にヒートアップして怒りをぶつけた。



 いくらこの時間が一刻も早く終わる事を願っても、親父の気が済むまでそれは続いた。



 ーー親父の様にはなりたくないーー





 そんな事を子供心ながらに思うほど、親父が酒を飲んで、気に入らない事があって八つ当たりする姿は、この世で一番醜い姿だった。
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