溺れる恋は藁をも掴む
 素直になれなくて、俺はそのまま自分の部屋に閉じこもり、ベッドでふて寝をした。

 悔しくて涙も出てきた。

 母さんは少し経つと、お盆に冷やし中華と麦茶を乗せて、俺の部屋にやって来た。


 「晶、どんなに辛くても悔しくても、お腹って空くんだよね……

 不思議だね。

 でも、それは生きてる証拠なんだよ。
もっと強くならなきゃって、身体が要求するみたいね。

 心とは別にね。

 お父さんは下手ね。
晶を応援したいのに素直に言えないの。
よく営業部長勤まるわね」

 母さんは寂しげに笑いながらも、俺を元気つけようとしていた。


 「あいつなんか居なくなればいい!!」

 俺の許せない心が親父をけなす。

 「晶、
お父さんが言うことは、悔しいけど現実よ」

 母さんが強い視線を俺に向けて言ったんだ。
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