溺れる恋は藁をも掴む
 ーー私に巡ったチャンスーー

 それは誠治さんの連絡先を知ってる事!



 多分ね、誠治さんにとっては、一緒に飲んだ子が、同僚の失言で怒って帰ったから、そのフォロー程度での事で、私を気に入ったとかじゃなく、印象を悪くしない為の優しさに過ぎない。

 バカみたいに期待もしない。
私は自分を世界で一番理解してる。

 これが優奈みたいな美人なら、ここまで卑下した考えもなく、連絡をするだろう…

 向こうはチャンスとばかりに、優奈ならデートに誘われるに違いない。

 ーーそこが美人とデブの違いーー

 デブは自惚れてはいけない!
いけないんだけど…


 滅多にないチャンスなんだ。
このチャンスを生かさないデブも居ない。

 いや、女ならチャンスを生かしてナンボよ!!


 撃沈なんて、生まれてから何度もしている。

 私の心は海の底で眠るタイタニック号より、頑丈なのさ!


 何度も引き上げられ、おんぼろになろうとも、恋への憧れは捨てきれない……

 自分でメンテナンスしながら、航海しなければ、いつまで経っても、恋なんて出来やしない。


 恋は航海に似ている。

 美しく広がる海原を目指して、景色を楽しむ。

 目の前に広がる世界は、航海に出なきゃ、見れやしない。

 陸で眺めていても、海の表面上の景色しか知る事はない。


 ーーならば、いざ恋海に向かい出航!ーー


 私は電車に揺られながら、誠治さんへのチャンスに挑む。


 普通程度の頭だけど、次に繋げるメールの文面を必死で考えた。
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