溺れる恋は藁をも掴む
 百合はびっくりした顔をしたけど、そのままキスを受けてくれた。

 ホンテッドマンションを出たら、ずっと手を繋いで歩いた。

 帰りにお土産売り場で、クッキーの缶を山ほど百合は買うんだ。

 「ママや店の女の子にお土産。
ディズニーランドに行った自慢するの!」

 『ディズニーランドの近郊に住んでる人には、自慢にもなんねーよ!』ってツッコミを入れたくなった。

 が、俺はそんな無邪気な百合が好きなんだと、改めて実感したんだ。

 百合がずっと視線を向けた、シンデレラの硝子の靴。

 名前も彫ってくれるみたいでさ‥‥‥


 「プレゼントするよ」

 「えっ、いいよ!」

 「今日の記念に」

 「本当にいいってば!」

 「キス記念」

 そう言って耳元で囁いたら、真っ赤な顔をした。

 硝子靴にYURIと彫って貰った。

 百合は何度もお礼言うんだ。

 「一生大事にする」って。


 大袈裟だな。

 働くようになったら、もっといいもんプレゼントするから……

 その反面、自分が稼ぎもない高校生だって事を思い知らされたよ。

 俺より少し大人の百合。

 百合を自分のものにしたいなら、それ相当の男が言わなきゃ、格好つかないんだなぁ……
って思った。


 ディズニーランドの帰り道も、ずっと手を繋いだ。

 帰り際に寂しくなって、百合を抱きしめた。


「今日は帰りたくないな‥‥
百合と一緒に居たい」
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