溺れる恋は藁をも掴む
 「俺には9つ違いの妹がいる」

 「知ってますよ」

 「よく、似てないって言われる。
当たり前だよね。
血が繋がってないんだから……」

 「えっ!そうなんですか?」

 驚いた振りをしたけど、最初から似てないと思っていた。

 「そうなんだ……

 俺の親父は小さな食品工場を営んでいるんだ。

 雇っていた従業員と俺の母親が……
まぁ、そういう関係になってしまって、当時二歳の俺を置いて出て行ったんだ。

 本当の両親は離婚してるんだ。

 俺は親父に引き取られて、小学校低学年までは、殆ど祖母に育てられた。

 親父が再婚したのは、その頃だった。

 相手の人は、赤ちゃんを産んだばかりの人でね……

 その赤ちゃんが俺の妹。
名前は美月って言います。

 美月の父親は、美月がお腹に居る時に事故で亡くなったらしい。

 美月の母親は、お腹に美月を身籠りながら、
親父の会社でパートをしていた未婚の母でした。

 そんな美月の母親を不憫に思った親父が、何かと気に掛けるようになった。

 いつしか美月の母親に想いも寄せるようになって、再婚したんだ」
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