溺れる恋は藁をも掴む
 「幸せって人それぞれだから、華ちゃんにとっての幸せは何だろう?って漠然に思っただけだから気にしないで!」

 考え込む私にそう言ってくれた誠治さん…


 「私の幸せは、美味しいものを食べる事もそうなんですけど……

 1日の最後に、今日の事を話せる人が居るだけで、幸せだと思います。

 たわいのない話でも、くだらない話でも聞いてくれる人が居たら、明日を迎えるのも楽しくなるかな?って思うんです…」


 「なるほどね!
 確かにこっちに来てから一人暮らしだし、寂しく感じる事もあるけど……
毎日の忙しさに寂しさを紛らわせて、そういう感情にも疎くなりがちだったな…」


 「婚約中のお姉ちゃん見てると、幸せそうに見えます。
 仕事は、結婚退職するので、忙しいみたいだけど、休みの前日になると、彼氏に長々と電話したり、メールのキャツチボールしてたりで……
『明日会うのにね…』なんて、家族の者が言っても、『今日の事は今日。明日は明日!』なんて、にやけた笑顔で言われると、どうぞ、ご勝手にって感じになるけど、羨ましくも思います…」


 「そういう時期が一番楽しいかもね?
俺はそんな経験ないから、羨ましく思うよ」


 「そうなんですか?」

 意外とは思わないけど、私なら放っておかないのにって気持ちが沸き上がった。
でも、その気持ちがバレたら恥ずかしい。

 「うん。
モテない田舎もんですから!
だから、誘われたら合コンに顔出します!」

 誠治さんはそう言いながら笑った。

 「都会に生まれても、モテないもんで、合コンのお世話になりますが、中々成果が出ませーん」

 私もつられて笑い話のように、自虐的なネタを披露した。
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