溺れる恋は藁をも掴む
 一通り水族園を見て回ってから、観覧車にも乗った。

 ーー二人だけの空間ーー

 上を目指して、ゆっくりと上がってゆく景色を眺めながら、箱の中で私達はキスをした。

 下の景色が段々小さくなり、頂点までやってきた。

 縮図の景色を見渡しながらも、唇はあなたを求めた。

 ロマンチックになりたかった。

 恋人になろうと必死だった。

 私はあなたの居心地の良い女になりたい。 

 本当にあなたが好き!

 好きなの……



✾✾✾


 水族館の帰り道、あなたの家に招かれて、夕食を一緒に食べる事になった。

 帰り道にスーパーで買い物もした。

 彼氏の家で料理をするって幸せ。

 彼氏なんて居ない頃、そういう妄想で盛り上がれたりもしたんだもん!


 ーーあなたの部屋に上がるーー

 部屋は綺麗に片付けられていて、あなたの真面目な性格が滲み出ていた。

 私は台所を借りて、鯖の味噌煮とほうれん草のおひたしとワカメと豆腐の味噌汁を作る。

 メニューも男の人が喜びそうなものをチョイスしたのは計算だよ!

 手料理作戦で、あなたのハートを摑みたい下心は、上手く隠す。



 「華ちゃん、料理上手いね!
いいお嫁さんになれるよ」

 無意識で言ったあなたの言葉。

 女が厄介なのはさ……
男の何気ない一言が尾を引いたりするのよ!



 あなたの家で、御飯を作り、一緒に食べるのは、私があなたの彼女だからなんだよ…


 食事が終わった恋人達は、当然、そういう雰囲気になる。


 ーーあなたに抱かれたいってーー
< 80 / 241 >

この作品をシェア

pagetop