これを『運命の恋』と呼ばないで!
現実1
テレビの報道番組は昨日からずっと同じことを繰り返していた。


『昨日の正午過ぎ、シンガポールへと飛び立った航空機の行方は未だ掴めておりません。捜査当局の話では乗員乗客合わせて150名の命はほぼ絶望的と見られており、一刻も早い墜落現場の特定が急がれております。

ーーここで、乗客・乗員全員の方のお名前を、今一度お知らせ致します』


「もういい!テレビを消して!」


見れば見るほど嫌になる。
繰り返し映るナツの名前を、これ以上脳裏に焼き付けたくない。


「トモちゃん、少しは休まないと」


ピリピリしてる私に同居人の鶴井君は気を使う。


「休むなんてムリ。だって、こうしてる間にもナツの命は消えようとてるかもしれないんだもん!」


体力がどんどん奪われてるかもしれない。
意識が混濁として、気を失いかけているかもしれない。


「私は何もできないけど、生きてると信じて待っておきたいの!ナツの元気な声を聞くまで、何もせずに此処にいるっ!」


昨夜のうちにナツのお母さんからも電話があり、「何か言ってきてないかしら?!」と、必死な感じで尋ねられた。




「いえ、何もまだ……」


答えるのも躊躇われるような雰囲気でいる私に、ナツのお母さんはがっくりと気落ちして電話を切った。

クレハさんはあれからずっと祈祷をし続けているけれど、ナツと思われる女性の魂とは交信が繋がらないと言った。


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