これを『運命の恋』と呼ばないで!
ちょこっとおまけ
ホテルで一泊した翌日、私達はシンガポール行きの航空機に搭乗した。

大石先生のアドバイス通りに酔い止めを服用しアイマスクとマスクを着けた先輩は、「今日こそは大丈夫だ!」と意気込んだ。


「そうしてると怪しい人みたいですね」


テロリストと間違われそう…とからかった。

怒る気力もない先輩は、「勝手に言ってろ!」とふて寝を始める。


搭乗前に電話をした母からは「ナツは悪運だけは強いんだからね!」と、変な太鼓判を押された。



「悪運か」


呟く言葉に反応もせず、先輩は黙って出発を待ってる。


(そう言えば何かあっても必ず助け船があったな…)


鹿にぶつかってからこっちのことを思い返した。

私がピンチの時は、いつも何がしかの助けがあった。


(向こうへ着いたら大石先生に連絡してみよう。
生きてると報告をしてくれてありがとうございました…と、お礼を言っておかないと……)


コンクリート地面を目にして微笑む。


私の未来はこれからもずっと続いていくんだ。


目を閉じて微睡んだ。


飛行機が空に舞い上がっても、二度と同じ悪夢は見なかった……。



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