これを『運命の恋』と呼ばないで!
先輩の後ろをついて行きながら鬼だと思い続けてきた人が別人のように感じ始めた。



この人は、もしかしたらクレハさんの言ってた強い味方ではないだろうか。

さっきも今も、その場に居合わせたにしては偶然が重なり過ぎている。

支えられた腕も、肩に置かれた掌も、胸の中を熱くするには十分過ぎるものがあった。


こんな感情を男性に持ったのは数年ぶりだった。

社会へ出てからの私は、毎日の仕事に振り回されてばかりいたから。




「……先輩」


「ん?」


前を行く人が振り向く。

その顔を眺めながら、この人が一緒に居てくれるなら心強いと思った。



「あの……私、お願いがあるんですけど」


仕事も手伝ってもらった上に食事まで奢ってもらい、今は自宅まで送り届けてもらっている。

これ以上、何を願ってもいけないとは思うけど、他にはもう方法がない。




「私と……け、け、け、ケッコンして下さいっ!!」


清水の舞台から飛び降りた。

ある意味、自殺行為な言葉を吐いて、私はぎゅっと手を握った。


「私、もう直ぐ死ぬかもしれないんです!!」



ーーああ、神様。

どうかこの人が、私の救世主であります様に……。









< 27 / 218 >

この作品をシェア

pagetop