わがまま姫の名推理


「じゃあ……ちぃちゃんね」



変な呼び名はやめてほしい。



でも、不思議と嫌ではなかった。



「僕のことはどう呼んでもいいからね」



この人の名前は確か、すみよしゆきと。



「『ゆきと』ってどう書くのか?」



もう普通に話せる。


こんなこと、初めてだ……



「雪に兎だよ」



雪兎は普通だし……


雪うさぎもありがち。


というか、長い。


だったら………



「ウサギだな」


「え、ウサギ!?」



なにか気に入らなかったのか、ウサギは目を見開いている。


あたしは結構気に入ったのだが……



「ダメか?」



初めて目を合わせた。



「うっ……」



ウサギはなぜか言葉を詰まらせた。



「……いい、よ……」



なんだかいやいや承諾した感じはするが、本人の許可は得たのだ。


今後はウサギと呼ぼう。



「さ、中に入って」



あたしは案内されるがままに家の中に入る。



「すごい……!」



入った瞬間広い玄関。


靴箱の上にはガラスのような綺麗な置物。



「……お邪魔します……」



靴を脱ぎ、そろえる。



「ちぃちゃん、小さいのにお行儀いいね」



余計なお世話だ。


自分が小さいことくらい重々承知している。



「何歳なの?」


「5歳」


「5歳!?」



前を歩いていたウサギは足を止め、驚いている。



「5歳であの図書館にあった本、全部読んだの!?」



まぁ、そういうことになる、か。



「いつから読み始めた?」



いつからだっけ……



たしか、1歳になるときには施設の本を読んで、3歳から……



「3歳から読み始めて、2年で読破」



我ながらすごいとは思う。

< 3 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop