恋凪らせん
離婚に使った労力のストレスを解消すべく、私はスポーツジムに通い始めた。
そこで出会ったのが和彦だ。偶然にも私と同じころ同じような理由で離婚をした彼は、やはり似たような理由でジムに通っていた。
ラーメンが好きだという話で意気投合し、互いのおすすめを食べに行こうということで会うようになり、出会って半年も経つ頃には特別な相手になっていた。
つき合ってもう二年。年齢的にも状況的にも、再婚の話が出たって不思議じゃない。けれど私たちの関係は足踏みしたままで、そこから一歩を踏み出せないでいた。
私のほうには結婚願望はある。今度こそ幸せな家庭を築きたいと望んでいるし、その相手は和彦でなければ嫌だとも思っている。子どもだって産みたい。
でもそんな甘ったるい願望に隠れた本心を言えば、今の状態が安定しすぎてしまっていて変化が面倒なのだ。
経済的にも自立している。生活に不自由はひとつもない。
結婚のメリットより、デメリットに臆病になる。
しかも「一度結婚に失敗している」という傷が大きい。
それなら今のままでもいいんじゃないの?
会いたいときに会えばいい、自由な時間も気兼ねなく使える。
もしうまくいかなくなったら、さらりと別れられる身軽さも残せる。
万が一の傷は最小限で済むに違いない。
そんなふうに未来から目を背けてしまうことも仕方ないと思う。
ゆらゆらと思考の海を漂っていた私は、和彦に呼ばれて顔を上げた。
「麻子、そろそろ出ようか」
ゆったりとベッドから下りた和彦は椅子に放った服を身に着け始めた。「そうだね」と答えて、私も下着を拾う。
なんの不自由もない、バツイチ同士の大人のつき合い。
デートの終わり、お互い別々の帰路につくのが少し淋しいと思うだけだ。