よるのむこうに

天馬はしばらく歯を食いしばっていた。感情を抑制するのは天馬の得意とするところではない。

いざとなったら私が全力で天馬を止めよう。そう腹を決めて彼の手首に手を掛けていると、やがて天馬は吐き出すように言った。

「お前らが俺に何を期待してるのかは知らねえけど、そこまで言うならやってやるよ。
でもな、俺は以前の俺じゃない。何かあってもプロが避けろよ?俺は素人だからな」

彰久君は満足そうに頷いた。


「いいですよね、樋川先輩」
「もちろんだ」

樋川選手も満足そうに頷いて、アシスタントさんから受け取ったボールを天馬に向かって投げた。

天馬はそれを受け取るなりタン、と軽い音をさせてドリブルした。素人と言いながらその天馬の手つきは非常にこなれていて、彼の体に染み付いたボールとの歴史を匂わせた。




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