よるのむこうに

病気が進むにつれ、働きにくくなるかもしれない。
そんなぼんやりとした不安が、失業の恐怖にかわりつつあった。
自分が考えていたよりもずっと私の足は悪くなっている。

医師の説明によるとリウマチの進み方は人によってかなり個人差があるらしい。私は特に根拠もなく歩いたり立ったりできなくなるのはずっと先のことだろうと考えていた。けれど、今、自分の体を通して実感しているのは日々強くなる痛みだった。
初めて病院に行ったときの「膝の水を抜き、ステロイドを入れる」という治療もその場では一瞬で痛みが去るのだけれど、すぐにまた膝が腫れてくる。はじめは一度通院すれば十日ほどは全く症状がなくなっていたのに、今は一週間も治療の効果がもたなくなっている。

私の体の中で、病気が狂ったように暴れていて……私はなすすべがない。自分の体の内部で起こっている事だけに逃げることもできない。ただただ、怖れびくつきながら狂ったように暴れる病気をただ見ているしかない……。敵が自分の体では戦うこともできない。

困った。
こんなに打つ手もなく困る経験というのは私の人生で初めてのことだった。

いままで生きてきた中で、私はさまざまな困難に向き合ってきた。
小学校の子供同士の人間関係や受験、就職、恋愛、仕事……。どの困難も世間にはありふれていて、そしてありふれているだけにその困難の乗り越え方はいくつもあった。幸い私はそこで大きくつまずいてたちなおれないということはなかった。きっと私は周囲に恵まれていたのだろう。いつも誰かしらアドバイスをくれたし、親も上司も友人も手を貸してくれた。
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