先生。あなたはバカですか?

––––今年も鮮やかなイルミネーションに、沢山の人達が集まって…––––


テレビから流れてくる、やたらとテンションの高い女子アナウンサーの声に、私は食事の手を休め、テレビへと目を凝らした。


テレビの中では人混みでもみくちゃになっているカップルらしき男女が、インタビューのため女子アナウンサーに捕まった所だった。


「わざわざこんな人混みに出掛ける意味が分からないわ」


そうボソッとごちているのは、私が作ったカレーを仕事の資料を読みながら口に運ぶお母さんだ。


相変わらず器用だな。


食べる。読む。テレビを見る。


家に居る時くらい、どれかひとつにすればいいのに。



そんな事を思いながらも、実は私の気持ちは密かに高揚していた。


最近では、こうやってお母さんと食事をする事が多くなった。


前は、一緒に食事をとる時間すら勉強に勤しめというスパルタな母だったにも関わらず、
この間の一件以来、私の勉強に関して何か言いたげな顔をするものの、口を出してこなくなった。


それをいい事に、私は、お母さんが休みの日には出来る限りこうして一緒に食事をとるようにリビングに出ていくようにしていた。
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