モアイ・ザ・ババリアンの涙
ガラスごしに目が合った。

その人はドアの一番近くで、やや半身になりながら窓の外を見ている。

僕は入った途端に押し流されてエアーポケット。

ドアにも吊り革にも遠い所にいる。

なんにも届かないんだ。

吊り革にも、あの子にも。

ここから世界はすごく遠くって、乗り越えられないくらい厚い大きな壁があって、僕みたいな人間はそこから先は通れないようなカンパニーがあって･･･なんかそんな気がする。

制服の彼女はなおも外を見ながら、はるか遠くを眺めている。

電車が揺れると彼女も揺れる。

僕はつかまる所がないから、隣と肩をぶつけ合って小さくなるしかない。

また目が合った。

同じ車両になるのは、これが初めてじゃない。

話しかけてみようか？

でも･･･

ゴトンと一回、大きく揺れた。

次の駅に着いたんだ。

後ろから降りる人に押し出されるようにして、彼女は人込みの奥に消えていった。
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