わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!


川の水は冷たくて、手を浸せばとても気持ちがいい。

水を汲んだ後、履物を脱ぎ川の中へ脚を入れれば、水底は浅くてふくらはぎまでがつかる程度。

流れは緩やか、危険はまったく感じられない。

ハンナたちも、同じように水に入っている。

けれど彼女たちは水を汲むのはもちろんのこと洗いものもあるようで、忙しく手を動かしていた。


もちろん、リリアンヌも遊ぶつもりはない。

透明な水の中には魚がたくさん泳いでいる。

これを捕まえることができれば夕食のおかずの足しになりそうなのだ。

水の中でじっとしている魚たちは、リリアンヌでも容易に捕まえられそうに思える。

そうだ、花の蜜を吸う蝶を捕まえるようにすればいいのではないか。

水の中にそーっと手を入れ、慎重に伸ばした指先が触れた瞬間、魚は俊敏な動きをみせてするりと逃げてしまった。


「残念、意外に難しいわ」


さっき逃した魚は少し先の石の陰でじっとしている。

今度こそ!と何度も挑戦してはするすると逃げられてしまい、ワンピースの裾が濡れるのも気にせずに夢中になっていると、どこからか男性の笑い声が聞こえてきた。


「お嬢さん、そんなへっぴり腰じゃ、魚は一匹も獲れないぜ?」

「誰!?」


その愉快気な声のする方を見やると、少し離れた下流の岸に立った黒髪の青年がリリアンヌをじっと見ていた。

騎士たちと同じような服を着ている彼も旅の途中なのだろう、白い馬に水を飲ませている。


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