わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「リリさま、おはようございます!」
テント泊まりとは比べ物にならないほどの爽やかな笑顔で、ハンナとメリーが入ってくる。
「おはよう、ハンナ、メリー」
元気な二人の笑顔を見てリリアンヌはホッとする。
二人ともよく眠れたみたいだ。
「リリさま、今日は少しお天気が悪いんです」
メリーがカーテンを開けると、窓の外に広がる空は雲一色だった。
「道中雨が降らないといいわね」
「リリさま、朝市も雨が降ったら困りますわ」
メリーと一緒に空を見上げるリリアンヌを見て、ハンナはいつもと様子が違うと感じていた。
毎日主のことを見ているハンナしかわからない僅かな違いで、もしや旅疲れで熱を出したのだろうかと心配になる。
「リリさま、今朝は具合が悪いのですか?」
ハンナは顔を歪め、失礼いたしますと言って主の額に手をやる。
が、いつも通りの温かさで息も平温、熱はないようだ。
メリーも心配げに体に触れたりしてみるが、どこにも異常は見つけられない。
ハンナは首を傾げる。
昨夜就寝の挨拶をしたときと今とでは、どことなく雰囲気が違うように感じるのだ。
片や、リリアンヌは自分のどこがハンナに心配をかけているのかわからず、同じように首を傾げた。
「私は元気だから心配ないわ。それよりも朝食をすませて、朝市に行きましょう。楽しみにしていたでしょう?」
リリアンヌはにっこり笑って、二人を促した。