わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
そして、一夜明け。
宿の前には正装を身に着けたミント王国の騎士たちが揃う。
白い騎士服に白いマント。
腰に差した剣の鞘が日の光を受けてきらりと光る。
馬は王国の紋章が付いた馬具を装着し、馬車には王国の旗が掲げられている。
マックたちは玄関前で整列し、王女のお出ましを待った。
その雄々しい姿は大変近寄りがたく、商人と同一人物には到底思えないもので、見送りに出ていた宿の者は皆遠巻きにして眺めていた。
その中には、昨日のコックの姿もある。
騎士たちが一斉に礼をとった瞬間、玄関先を見たコックの目と口が大きく開かれた。
楚々と出てきたのは大変美しい王女で、何の変哲もない宿の玄関が貴族の館に変貌したかのような錯覚に陥るほどだ。
遠巻きに見ていた者たちからため息とも歓声とも取れないどよめきが起こり、皆は急いで玄関傍に駆け寄り並んで姿勢を正した。
トップから裾にかけて淡い水色から濃い青色に変化していく美しい色のドレスは、ハンナが朝市で購入した反物を使ったもの。
昨日まで一つに束ねられていた茜色の髪は下され、光を浴びてきらきらと夕日色に輝く。
その後につくハンナとメリーも、一般庶民が口をきけないほどの高級侍女ぶりをみせる。