夫の教えるA~Z
N 病院へ行こう(下)
ピーーポーー…ウーー…



ガラガラガラッ

バイタルチェック!

酸素吸入ッ、急いで!

先生、心拍数が…

心臓マッサージ開始!

1、2、3っ

ダメだ。


ピーーーーー…


「14時30分…心肺停止、残念です…」

『使用中』の赤いランプが消えたICUから出てきた医者が、残念そうに首を振った。

「そ、そ…んな…」

ガクリと膝を落とした私は、ドアの閉じかけたそこへスルリと滑り込んだ。

「あ、君!」
「あ、アキト……さん」

白い布の掛かった顔。

私は、白いシーツの掛かった身体に縋った。

「い、嫌ぁ。お願いだから…死なないでぇ~」

四肢がまだ温かい。

「お願いよぉ、何でもするから。
オカズに椎茸は出さないし、
エアコンの設定も28℃から下げない。
前にダメって言った××××も、
もう何だってするからぁ……ぐすっ」

祈る形に組まれている手をほどくと、右手を両手で包みこむ。

「ああ…あんなにキレイだった手が…
こんなにシワシシワに萎んでしまって
…辛かったのね…」

それをそっと持ち上げると、頬に擦り寄せた。
< 123 / 337 >

この作品をシェア

pagetop