夫の教えるA~Z
P 聖なる夜に(甘)
目を開くと

愛しい人が

見つめていた____



「……目、覚めたか?」

心配そうに私を覗きこんだ彼が、ホッと安堵の息を吐いた。

汗ばんだ手が、右手をギュッと握り締める。

「触らないで」
私はその手を強く祓うと、クルッと彼に背を向けた。

「ここから出てってよ!」
声を荒げる。


大事な仕事を蹴ってまで、わざわざさがしに来てくれた彼に酷いコトを言っていると、自分でも思うが、

心とは裏腹の言葉ばかりが口を突いた。

ひとたび振り上げた拳は、簡単には下ろせない。
早い話、引っ込みがつかない。

アキトさんは、眉尻を下げて寂しげに笑んだ。

「それは…出来ないよ。
君と約束したから。
『ずっと離れない』ってさ」

「ぐっ…
じ、じゃあ、それは撤回しますから」

彼は首を振った。

「ううん、そっちが先約だ。
触られるのが嫌なら触らない。
でも君からは離れない」
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