夫の教えるA~Z
「そこで雪ん子トーコちゃん、君にたっての頼みがある」

「何か嫌な予感……」
 私の言葉をすかさず彼は遮った。

「俺にレクチャーして欲しい」

「え~!イヤですよ。
 貴方が女の子にエエカッコするのに教えるなんて…ひゃっ」

 手の甲を撫でながら、チュッと指先を吸いはじめる。
 
「違う、そうじゃないんだ。いいかい?
 俺は支社のカナメ、立て看板みたいなモノだ。
 そんな俺が『コケちゃった♥』なんていってみろ…
 社員達は『こりゃあ、うちの会社もコケるなこりゃ』『ああ、今年もボーナスダウンか』なんて考えてしまうだろ?俺のせいで…そんなのは許せない!

……ってコラ、ちゃんと聞きなさい」

 両手をギュッギュッと指圧しながら、彼は指先へのキスを繰り返す。
 
 オナカの奥から掛け上がる “ゾクゾクッ” に何とか堪え、私は反論してみせた。

「う…そ、そんなの。
 勝手にスクールにでも入ればいいじゃないですか」

「ヤダ、カッコ悪いもん」

 内弁慶め。

 ギッと睨み上げるも、彼は余裕たっぷりに目を細めた。

 と思ったら。

 カプッ。
 彼は突然指先を食んだ。

「や…」
「フン」

 ビクンと身体を震わせた私を、まるで見透かしているように、彼はゆっくりと指先を舌でなぞり始めた。

「あああ…」
「なあ、頼むよトーコ」

「だ、ダンナサマ…いけませんっ。
お手てには常に数億個のバイ菌が…」

「何だと?
大切な君がバイ菌に冒されては一大事。
よ~し、俺が徹底的に除菌してあげよう」

「あっ…ちょっと…や…ぁ」
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