夫の教えるA~Z
小一時間ほど前の、仕事帰り。

ふとみると、会社の玄関前に夏姉が立っていた。

『夏子…』


俺を見るなり、彼女はツカツカとこちらへ歩み寄ってくる。


『何だよ、こんなところで。用があるなら電話にでも入れて……

ぐ、ぐはぁぁっ』


ピシャーーンッ!


途端、雷に打たれたような痛み。


衝撃とともに2、3步後退した俺を彼女は更に追い詰め、立て続けに3発、頬に平手を喰らわした。

『はうっ、あふんっ、ぎゃふんっ』

不意討ち攻撃に為すがままの俺は、とうとう地面にシリモチをつく。

彼女は、俺の上に乗っかると、マウントを取って襟元を掴んだ。


『アキトの…アキトの癖に生意気なのよ!

アンタねえ、他人《ひと》のこと言えた義理なの?!

余計なことすんじゃないわよっっ』

『くっ…、あのな…
いくら俺が頑丈に出来てるからって…うっぼおっっ』


彼女はフィニッシュに、俺の脇腹にボディブローを決めた。


『アンタになんか言われなくてもね!
私ちゃんと分かってたんだから。

バカバカバカッ、男なんかみんなキライよ。

アイツも…アンタもみんな同じ、死ね、死んじゃえっっっ』

ちょっとした修羅場だ。

喚きつつ、ポカポカ俺の胸を叩く姉。
しかし、その拳にさっきまでの力はなく、どこか弱々しい。
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