夫の教えるA~Z
「ごめんね、つい昔の血が騒いじゃって…
トーコちゃん大丈夫?」

「う、す、すみません…ちょっと目が回ってて。大丈夫、ちゃんと立てますから…う、う゛ええっ」
「ははは…無理しないで、ちょっと休もう」

後部座席から降りるなり、植え込みにしゃがみこんでしまった私を支え、夏子お姉さんは、傍らのベンチに座らせた。
「う゛…で、でも、早く届けなくっちゃ」

「あー、いいっていいって。
私行ってくるからさ。えーっと、アキトにこれ届ければいいのよね。どこに行けばいい?」

「あ、2階の『支社長室』ってとこです…
エレベーター上がって奥の」

「ちっ、アキトのくせに、個室なんて生意気ね。じゃ、少しだけど休んでて。帰りはゆっくり流すから」

「スミマセ~ン…」

弱々しく応えた私に、もう歩きだしていた夏子さんは、元気良く後手を振った。
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