青春グラフィティー*先生と生徒の関係。
「…せんせー…?」
「………」
「せんせー、何も用がないならあたし帰りたいんだけど」
「……で、」
「うん?」
「…勝手に俺の中に入ってきて居座ったと思ったら、急に居なくなって…」
「えっと…?」
「気づいた時には畑山と仲よさ気にしてて…」
「恭ちゃん?」
「…なんであいつは名前呼びで、俺は名字呼びに戻ったんですか」
先生の腕の中から顔を上げれば、先生が傷ついた顔をして、今にも泣き出しそうだった。
だって恭ちゃんは、
「お姉ちゃんの旦那さんだし…」
それに先生には彼女がいると思ったから。
そう言うと、先生は長い長い溜め息を吐いた。
腕の中にいるあたしを見ながら、先生は口を開く。
「この前畑山と話してたのは」
「お姉ちゃんが今恭ちゃんが借りてるマンションに同居してて、お姉ちゃんに会うために恭ちゃんにお願いしてたの」
先生を見ながら言えば、先生は可笑しそうに笑いだした。
「全部俺の勘違いでしたか」
「勘違い?」
「いえ、何でもないです」
それだけ言うと、先生の笑みが黒くなる。
「それで?俺を散々避けてた理由を納得するように説明して欲しいですね」
「…だって、だってせんせーがあたしの好きを受け入れないのは彼女さんがいるからで、彼女持ちの人が言い寄られても面倒だろうし…、それに彼女さんはいい思いしないかな?…って」
「ふぅん」
先生の腕の中にいるあたしに段々と顔を近づけてくる先生。
「好き好き言いながら、散々俺のこと避けてましたよね。
階段で会った時なんて、すぐに目を逸らしましたしね?」
先生の言葉にあたしはしどろもどろになる。
あの時のあたしは兎に角精一杯で、先生を見たら声を掛けたくなるから、喋りたくなるから、また保健室に行きたくなるから。
だから、先生と目を合わせないようにしてた。
考えがまとまってない状態で話せば、先生はまたくすくす笑いだす。