屋上カメラマン
「証拠を撮ったなら、見せてくれないか?」

 そう頼んだが、携帯を奪って証拠を隠滅する気でしょ、と聞き入れてくれなかった。だから無理矢理携帯を奪った。彼女は抵抗してきたが、力ずくで携帯をもぎ取った。

 その弾みで彼女は尻餅をついてしまった。かなり乱暴な行為になってしまったが、こうでもしないと“証拠”を見ることはできないだろう。

「……良く撮れてるな」

 カメラを構える自分の姿を初めて見た。

「こんな表情してたんだな」

 そう呟いた後で、涙を溜めて悔しそうに俺を見上げるようにして睨んでいる彼女に、携帯を投げて返した。彼女は驚いた顔をして、慌てて手を伸ばして携帯を掴んだ。

「どうして俺が屋上で写真を撮ってるのに気付いたんだ?」

 そう訊いたが、彼女は何も答えてくれなかった。強引に奪われたはずの証拠がどういうわけかあっさりと返ってきたので、混乱しているのかもしれない。

「レンズが日の光を反射するのが見えたのか?」

 何も答えない彼女の代わりに質問を重ねた。やはり言葉が出てこないのか、彼女は無言でコクリと頷いた。
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