ぼっちな彼女と色魔な幽霊
砂浜からまっすぐ歩いていって波打ち際ぎりぎりにいた。寄せては引く波に呼吸を合わせるように近づいて、離れる。何度もそれを繰りかえす。
「わああっ」
波と呼吸があわなくて、わたしのローファーのつま先が濡れた。
「ばーか」と、ヨウは笑った。
「ばーかじゃないわよー」
「沈めてやる?」
「ヨウが言うと、何も笑えない」
ヨウは「俺もここに来たことある気すんなー」と、伸びをして、波打ち際を歩いた。
海、嫌いではないんだな。来なかっただけで。行く機会がなかっただけで。
こうして潮風を感じることも、海の匂いも心地よかった。
先に連なる丸いタンクが見える。あれは、製油所と発電所どっちだったかな。
それに気を取られていると、いつの間にかヨウがわたしの真後ろにいて、背中を押す。
「わっ」すんでのところでわたしの腕を引いた。
「心臓とまる!」