優しい嘘はいらない

道路を走る車のライトが目の前を通り過ぎていくだけで、立ち寄る気配はない。

この1時間がとても長く感じ、気が重い時間からやっと解放された時の疲労感にグッタリとしていた。

もう、このまま帰ってしまいたい。

約束したと言っても、酔った勢いでの話だ。

よし…このままブッチしてしまえ。

そう決心して、パソコンの電源をオフにして机の上をささっと片付け立ち上がる。

「お先に失礼します」

「お疲れさま」

同じ事務を担当しているベテランの風見さんがにこやかに答えてくれる。

中学生のお子さんがいるママさんだ。

「そんなに急いでどうしたの?もしかしてこれからデートかしら⁈」

うふふ…若いっていいわね。

と言いながら風見さんも片付けを始める。

「残念ながら、違うんですけど…急いでいるので先に帰りますね」

「そうなの…台風が近づいてきているから気をつけて帰ってね」

「はい、大丈夫です。このまま家に帰るだけですから…」

ではと頭を下げてすぐ側にあるロッカーから鞄を出して勝手口から外に出るとブルッと身震いをした。

さすがに半袖のブラウスにタイトスカートでは、もう寒いかもしれない。
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