サヨナラも言わずに

そりゃ、驚くよね……


病院では行きたくないなんて、わがまま言ったのに。



「美琴、大丈夫なの?」



それでも私の心配をしてくれるお母さんのこと、優しいなんて一言で表現しきない。



「大丈夫だよ。それに、黒瀬もいるし」



私は笑顔でごまかした。



ま、黒瀬がいることが一番嫌なんだけどね。



「う、ん……」



半信半疑だなぁ……


無理ないと言えばそうなんだけどさ。



「辛かったらすぐ言って?ムリは絶対にしないこと」



お母さんはそう言いながら、優しく両手で私を包んだ。


それがなぜか嬉しくて、私は一筋の涙を、お母さんに気付かれることなく流した。
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