サヨナラも言わずに
突然の別れ


「美琴ーっ!旭くんが迎えに来てくれたよー」



翌朝、着替え終えるとお母さんのそんな声が聞こえてきた。



わざわざ迎えに来なくたっていいのに。


この期に及んで逃げるわけない。



ま、あいつなら迎えに来ることくらいなんとなくわかってたけどね。



「おはよう、旭」



玄関でお母さんと仲良さげに話してた黒瀬に挨拶すると、黒瀬は視線を私に向けた。


と、同時に照れ始めた。



「お、おう……」



どこに照れる要素があったのよ。


制服なんて見慣れてるでしょうに。



そういえば髪切ってるんだっけ。


黒瀬の照れ顔がはっきり見える。



こんな顔してたんだ……


女子が騒ぐだけある……のか……?



てか、やっとこの髪型に慣れてきたよ。


嫌だけど。



「いってらっしゃい」


「行ってきます」



お母さんとこんな挨拶するの、いつぶりかな。
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