ファインダー越しの瀬川くん
「山内さんってば、なんでそんなに慌ててるの」

顔を上げれば、声を抑えて可笑しそうに笑う瀬川がいる。
ひとしきり笑って落ち着いてきた頃に、瀬川が笑顔で口を開く。

「山内さんって、面白いね」

初めて言われた言葉に驚きで僅かに目を見開くと、それを見た瀬川がまた可笑しそうに笑う。

「いつも教室では一人で、休み時間になるとカメラ持ってどこかに行っちゃうから、中々話しかけられなかったんだけど、もっと早くこうして話しかければ良かったよ」

朗らかに笑う瀬川の言葉は、特別バカにしている風でもなくいつも通りで、教室で仲のいい友達に話しかけるのとその声音は変わらない。
気がつけば、いつの間にか瀬川がすぐそこまで戻ってきていた。

「山内さんは、いつもそうやって笑っていればいいと思うよ」

かけられた優しい言葉よりも何よりも、すぐそばにある柔らかい笑顔に、今すぐシャッターを押してカメラに収めたい欲求が湧き上がる。
本能の赴くままにゆっくりとカメラを持ち上げていくと、ファインダーが目元に届く前に、すっと伸びてきた手にカメラをぐっと押さえ込まれてしまった。
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