ファインダー越しの瀬川くん
「ごめん……なんかつい」

心なしか、瀬川の顔が赤い。

「おい瀬川ー!早くしろよー」

開け放した窓の向こうから聞こえてくる声に、瀬川は振り返ってもう一度返事をすると、窓を閉めて小さく息を吐いた。
ちらっとその横顔を伺えば、やはり少し頬の辺りが赤い。

「それじゃあね、山内さん」

そう言って教室を出る瀬川の背中に、無意識に声をかけて呼び止める。
ドアに手をかけたまま立ち止まり、振り返った瀬川の不思議そうな顔に、咄嗟に声をかけてしまったことを後悔した。

すぐそこには、ファインダー越しではない瀬川がいて、静かに次の言葉を待っている。
けれど、極度の緊張で白く染まっていく脳内には、次の言葉が全く浮かんでこない。
なぜ呼び止めてしまったのか、その理由すら自分でもよくわからない。
ただ無意識に開いた口から、瀬川の名前が零れてしまったのだ。

慌てふためいてわたわたして、どうしようもなくて、とりあえず謝っておこうと口を開きかけると、くすっと小さな笑い声が聞こえた。
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