毛布症候群
甘くて悲しい夢をみる。


荻野羊佑を認識したのは、雨の日だった。

前日の夜に熱を出して、朝には下がったからと学校に来たのがいけなかった。
一時間目の終わりに保健室へ行くと先生は職員室へ行ってしまったらしく、勝手に入ってベッドを借りる。

眠るつもりはなかった。
それでも窓を伝う雨音に負けて目を閉じてしまった。


女性が笑顔をこちらに向けている。この人、誰だっけ。どこかで見たことが……。

その手を取って、抱き寄せた。


ハッと目が覚めて、身体も一緒に起こした。あたしの夢じゃない。

うるさい心臓の音を宥めるように大きく息を吸う。大きく吐いた後、カーテンの仕切りを開けて隣のベッドを見た。


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