毛布症候群
フィナンシェか。フィナンシェね……。
あたしもマグカップを置いて、立ち上がる。マオの背中を追った。
キッチンの高い所を覗いてフィナンシェを探している。
「この前貰ったのが……あった!」
「マオ」
「なにー?」
「話したくないなら、話さなくても良いよ」
箱を取り出して、台の上に置く。綺麗なシステムキッチンだ。コンロの周りが汚れていない。
箱を開けると、キラキラとしたフィナンシェが行儀良く横たわっていた。高そう、そして美味しそう。
「話さなくて良いの? 硝子はそれ聞きに来たんだと思ってたけど」
あたしの目がフィナンシェに奪われている中、マオは苦笑しながら言った。
「なんと言うか、あたしが死ぬまでに話してくれれば良いかなって気持ちになった」


