毛布症候群

名前は知らない。
先日、保健室で眠っていた男子だ。

接点が無さ過ぎて、あたしの名前をどうして知ったのかが不思議だ。

「今日の数学の講座出る?」

普通の授業が終わった後にある外部講座。あたしは数学だけ取っている。

聞かれたということは、同じく取ってるってことか。

「出るけど」

「テキスト、コピーさせて欲しいから貸して」

「……トモダチに借りたら?」

きょとんとした顔をされても困る。名前も知らない男にどうしてテキストを貸さないといけないのか。

「数学の講座を取ってるトモダチいない」

「寂しい奴」

席に戻って、鞄からテキストを出す。未だそこにいた男子に差し出した。


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