毛布症候群

慣れた手付きでそれを皿に盛る。隣でレタスを千切っていた人に呼ばれた。

顔を見上げると知らない男。

冗談を言われて笑う。「ついてきてよ」と真剣な声。
急にどうしたんだ、と気持ちが混乱する。

不安、嬉しさ、不安、緊張、優しさ。


身体の揺れで目が覚めた。停車した駅を見ると、ちょうど最寄り駅だった。

隣で座っている先生に声をかけようと視線を移すと、眠っていた。

外を見る。

雨が降っていた。さっきまで小雨だったのに、大降り。

自分の手が更に冷たくなるのがわかった。そして偏頭痛が襲ってくる。

「もうやだ……」

ドアが閉まります、とアナウンスがかかる。

最近見ないと思って調子に乗ってるからこのザマだ。目元を覆って泣きそうになるのを堪えた。


< 95 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop