語り屋の 語りたる 語り物





「見物、ご苦労様だな」

マッダーラは汗を拭いながら、舞台衣装を次々と脱いでいった。

「俺なりのお前らへのもてなしだ。気に入ってもらえたら良かったが」


イーザは壁にもたれながら水袋を口に含み、袖で拭った。

「取引をした商品の末路がみえたぐらいだな」

見下だした言い方に、マッダーラは、つくづく生意気なガキだと悪態をついてから、

「サーシャは?どうだった?」

と、淫靡(いんび)な響きを込めてきいた。

「お前の悪趣味が全開だった」

動じないイーザに、マッダーラは声をあげて笑った。


「今宵は泊まっていけ。
コロシアムの中でもよし、別の宿でもよし。

奴隷商人に手を挙げるやつはいねえよ。安心しな」


イーザは世話になる、とだけ言って部屋を出た。


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