語り屋の 語りたる 語り物



確かに、奴隷商人を襲うような連中は、余程の命知らずか、個人的に恨みがあるものに限った。

だが、金が大量に入った今、用心に越したことはない。


イーザは、気分は良くないが、マッダーラの息が直接かかった、コロシアムの中で夜を明かすことにした。


他の仲間は、今は色通りに足を運んでいる。
様々な趣向に寄せたこの街の色通りは有名だった。

恐らく、次の日まで戻ってこないだろう。


コロシアムを宿にする際、
マッダーラからは、空き部屋は好きに使っていいと言われたが、

疲れたのか、面倒になったのか、それ以上の説明は殆どしてくれなった。


自らで空き部屋を探そうとした時、階段を上がっていく足音がした。

近くの階段だ。

大人の男性にしては軽やかで小さな音だった。

女か子供だろう。

奴隷である可能性が高く、
ある一種の期待、というよりは予感が胸の中に閃く。


どの部屋が空き部屋かを確認を取るためにも、後を追うようなかたちで、

イーザも階段を登ってみた。
すぐにギシギシと音がなった。


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