無糖バニラ
「いいなぁー、このはは芦沢くんと仲が良くて!」
給食の時間。
机をくっつけて一緒に食べている友達が、羨ましそうに唇を尖らせた。
「ね。幼なじみとかずるいよー」
別の友達も、賛同しながら話に混ざってきた。
普段は他愛もない話をして、喋っていると楽しいと感じるのに、この話題になるとどうしたらいいのか分からなくなる。
翼とは、ただの友達なのに。
「付き合ってないって本当?」
「うん、付き合ってないってば」
その話、やめてくれないかなぁ。困る……。
「だったらさ、あんまりくっつかない方がいいんじゃない?芦沢くん狙いの子いっぱいいるんだから」
「そうだね。彼女でもないのに毎日一緒とか、ムカつくと思うよ」
なんか、その理由で翼に近づいちゃいけないとか、納得できない。
答えないことが、ささやかな抵抗。
――あたしはまだ、子供だった。